幼馴染二人の関係性について、
第三者はこう語る



『 俺のせいにしないでくれませんかねぇ、先輩? 』



そう言いながら、自分よりも背の高いバスケ部部長に食って掛かっていた榛名を止めてくれたのは、
彼がついこの間まで想いを寄せていた (が、実は野球部主将と付き合っていた) マネージャーの宮下だった。
一昨日、別の先輩相手に同じ様な状況に陥っていた彼を止めたのは、その彼氏・野球部主将である大河だ。
カップル揃って余計な事をしてくれやがって…と、暴走し掛けた榛名元希は、優しい先輩達相手にそう思う。

彼とトラブルになり掛けた二人に共通するのは、武蔵野第一高校主力運動部の部長だという事である。
バスケ部部長と、そしてサッカー部の部長…共に上級生だ。
そんな二人が、どうして野球部の二年生である榛名とトラブルに発展する事態になったのか。
それは、二人のもう一つの共通点にある。

「 なぁ秋丸、あれのドコが良いんだ? 」
「 え!?あれ…って、そのー…サンのこと? 」
「 今までその話してたんだろーが。聞いてなかったのかよ 」

いや榛名、本当に聞いてたぞ!と慌てる秋丸を見て、彼が自分の話を聞いていなかった事を知った。
まぁ、大体の話は通じているから構わない。そう、榛名の指す 「 あれ 」 とは、自分の幼馴染の事である。



自宅が隣同士で、高二現在同じクラス。基本的には普通 (人によってはそれ以上) だが、
どこか肝心な所が抜け落ちている気がしないでもない、そんなアホ女――
姉が県外の大学に進学してやっと自由になると思ったら、その姉の代わりと言わんばかりに小うるさくなった。
正直、鬱陶しくてしょうがない。だが悔しい事に、彼は、に口で勝てた試しが一度も無いのだ。

『 まーだプリントやってるんですか、榛名君。先生、もう教室出て行っちゃいましたよ? 』
『 「 まだ 」 ならともかく 「 まーだ 」 って所が嫌味っぽいんだよ!は黙ってろ! 』
『 はいっ、殴ろうとしているその手でシャーペンを持って、さっさとプリント仕上げて下さいねー 』


こうやって、自分にはエラそうにああだこうだ言うくせに、他人に対してはこれでもかと謙虚だ。
小さな頃から一緒だった榛名だからこそ、あんな大きな態度を取るのかもしれない。
それは幼馴染として嬉しい事であるが、腹立たしい事に変わりはない。

「 …あ、気になってたんだけど…部長二人に何て言われて、榛名はキレちゃった訳? 」
「 『 ちゃんが俺の所に来ないのは、幼馴染のお前が彼女を縛っているからだ 』 。
  ――しかも全く同じ台詞だぜ?ってか縛られてるのは、じゃなくて俺の方だっつー話 」

一つ年上だという事が信じられない程に、頭の悪い台詞だった。全く、何を勘違いしているのだろうか。
が先輩達に靡かないのは、単に魅力が無いからという事もあるだろうし、
何より本人がそういう事に鈍い…というか、色恋事に興味が無いせいもあるだろう。
どっちにしろ、それは自分のせいではない。あんな面倒な女、束縛したいとも思わない。

「 なぁ、秋丸…俺、そんなにを束縛してるように見えるのか? 」
「 …うーん…どうだろう。まぁ俺には、“世話焼き姉さんと我侭弟”にしか見えないけどな! 」

素直な意見を述べた秋丸の足が踏まれると同時に、その 『 世話焼き姉さん 』 から声が掛かった。
振り向くと、榛名の鼻先にモップの柄が当たりそうになった。慌てて後ずさる。

「 私語も良いですけど、ちゃんとお掃除して下さい!秋丸君も迷惑してるじゃないですか 」
「 いや、オレは別に…… 」
「 掃除?ちゃんとしてるだろうが、先生みたいな事言うんじゃねぇよ! 」

「 プリント提出が遅れた榛名君のお手伝いをしてあげているのは誰ですか?私だけでなく、隣のクラスの秋丸君もですよ? 」
「 いや、オレは別に…… 」
「 誰もに頼んでねーだろうが!勝手に手伝ってる身で……あ、バスケ部行くぐらいなら手伝えって言ったか 」

言ったんじゃん!という秋丸のツッコミが、放課後の2年B組の教室に響いた。
プリント提出が遅れた罰として言い渡された教室掃除は、まだ終わりそうにない。

「 …掃除終わったら、向こうの部活に行くのか? 」
「 まぁ、帰宅部だから暇というのもありますが…何より、先輩に呼ばれちゃったら、断れませんから 」
「 はァ?好きでもない男の誘いなんて断っとけよ。、そんなに暇なら野球部の見学でもしてろ 」

掃除の手を止めて会話する幼馴染二人を見て、秋丸は一人思った。
姉弟に例えていたが、榛名は確かにを束縛しているかもしれない、と。



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