ONE ON ONEと101、
似てはいるけど違います



妙に嬉しそうな顔をしているが、休み時間、懐かしい歌を口ずさんでいた。

「 あなたが好きーとっ、叫ぶーわっ 」

名前を忘れてしまったが、昔、これが主題歌のバスケアニメがあった事を榛名は思い出した。
自分が好きなのは野球なので、表立って「面白い」という事はなかったが、本当は時々観ていた。
不良だった梅木華道が、不純な動機で入部したバスケ部で、成長していく物語…だった気がする。
何しろ、自分が小さい頃の作品だったので、あまり覚えていないのだ。しかし何故、その主題歌を。

「 おい、誰のことが好きだって?叫んでみろよ 」
「 今のは歌詞であって、私のしたい事じゃありませんよ 」
「 そんぐらい分かってるっつーの!…で?何で今頃その歌? 」
「 むふふー、バスケ部の流山先輩が貸して下さったんですよ 」

彼女が鞄から取り出したのは、数冊の漫画――先程の歌が主題歌となっていた、『 リアルダンク 』 である。
しかも、完全版。彼女の話によると、先輩はコミック版も所持しているが、完全版も欲しかったのだそうだ。
コレクターである。暇潰し程度にしか漫画を読まない自分には、そういうコレクター精神がよく分からない。

「 漫画、ねぇ… 」
「 又貸ししましょうか?先輩に聞いてみますよ? 」
「 誰が読むっつったよ誰が!布教すんなウゼェから! 」

彼女が差し出してきた漫画を、乱暴に突き返す。しかし受け取りきれなかったらしく、床に落ちてしまった。
それを拾ったのは秋丸である。休み時間は残り五分しかないが、隣のクラスから遊びに来たようだ。

「 へー…リアダンじゃん!なっつかし〜!これ、さんの!? 」
「 いえ、流山先輩からお借りしたんです。もしや秋丸君、リアダン好き…? 」
「 ああ!昔、アニメも漫画も観てたんだ。本誌は、ちょっと残念な終わり方だったけど… 」
「 え!?どんな終わり方を……いや、これはネタバレに…やっぱいいです!自分の目で確認します! 」

…やけに盛り上がってんな。バスケ作品なのに。

「 秋丸…お前は何部だ 」
「 何部って、野球部じゃないか。どうしたんだよ榛名 」
「 しっ!秋丸君、彼はついに頭が…いえすみません、って落書きしないで下さいよー! 」

の筆箱から勝手にボールペンを取り出し、不良っぽい主人公が描かれている表紙に、榛名が落書きしようとしていた。
彼の手からボールペンと漫画を取り返す。普通のコミックなら400円前後だが、完全版は千円ぐらいする。
それを弁償するとなると、アルバイトが出来ない高校生のとしては、少しキツイ。
…まぁ本当にそうなったとしても、流山が彼女に弁償させる事などないのだろうが。

「 バスケのどこがいいのか、さっぱり分かんねぇな。野球のが断然面白いだろ 」
「 野球って…バスケと違って、派手な、見ていてスゴイ!って思える技が無いじゃないですか 」
「 バッカてめぇ、野球嘗めんなよ!?投げ方とか打ち方とかなぁ、それはもう色々と… 」
「 ダンクシュートって、生で見ると迫力あるんですよ。先輩のジャンプ力…凄すぎますよ…! 」
「 バッターの撃った球が投手の顔面ギリギリに飛んで来るのも、すっげー迫力が、 」

野球もバスケも、それぞれ面白い所がある。もうそれで良いじゃないか!と言いたかったが、
珍しく必死に反論している榛名が面白いので、秋丸は傍観している事にした。頑張れ、さん!

「 先輩が、 『 わん・おん・わん 』 しようって…意味が分からなくて、わんちゃんが101匹出てくる物語の事かと思、 」
「 それは 『 ワン・オー・ワン 』 だ! 体育で習ったろ、ってかお前なら英語分かるだろ!
  そんなにボケーッとしてたらなぁ、いつかテメーが流山にダンクシュートされて101匹も生まされ、っぞ、って何だよ秋丸! 」
「 ストォオオオオップ!中年親父みたいな下品なコト言うな榛名!さん、今のは気にしなくて良いからね!ほんとに! 」

爽やかな笑顔で榛名の頭をスパーンと叩き、廊下へずるずると引っ張って行った。榛名がギャーギャー叫んでいるのが聞こえる。
実はダルメシアンについて考えており、何について気にするなと秋丸に言われたのか、はよく分かっていなかった。
なので昼休み、榛名に聞いてみた所、スパーンと叩かれてしまった。――何故叩かれたのかも、分からなかった。


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