腹が減っては何とやら。
栄養補給は大事です



昼休みが始まり、自分の教室で、これから友人達と弁当を食べようとしていた秋丸の元に、がやって来た。
どうしたの?と訊いてみると、何か言い難そうに机の上を見ている。机の上には、自分と友人の弁当しかない。

「 実は…お弁当を忘れてしまいまして 」
「 え!?購買には行った?もしや、もう売り切れて―― 」
「 違います。その…お財布、も… 」
「 成程、忘れちゃったんだ 」

彼女は頭を縦に振る。クラスメートに分けて貰う事を考えたものの、皆ダイエットをしたいという理由で、
弁当のおかずが極端に少ないのだそうだ。その少ないおかずを分けて欲しい、とは言えなかったようだ。
お金の貸し借りも、親に駄目とキツく言われているらしく、誰かに借りるという選択肢も選べなかったようだ。
親に言わなければバレないというのに…きっと榛名なら、クソ真面目だなと呆れるに違いない。… 「 榛名 」 ?

「 さん、榛名に頼まなかったの?あいつの弁当、量はかなりある筈だけど… 」
「 考えましたよ!?でもですね、榛名君に事情を話したら、『 弁当も財布も忘れただぁ!?
  アホ、誰がに分けるかバーカ 』 って、絶対そう言うに違いないんです!頼めません! 」

そう言われたから隣のクラスにやってきた、という訳ではなく、『 そう言われそうだから 』 、先に此方へ来たようだ。
だが今の言葉は、秋丸の頭の中で、榛名の音声に容易に変換された。言いそうだな、榛名…確実に言うだろうな。

「 良いよ。弁当じゃなくて、休み時間に食べるつもりだった菓子パンもあるし…さんの好きな方を食べて? 」
「 あ き ま る く ん … ! 」

貴方に頼みに来て良かったです!と目を輝かせながら、彼が鞄から取り出した菓子パンを受け取った。
お弁当よりも、パンが良かったらしい。ちなみに彼が持っていたのは、少しコッテリめのチョコクリームパンである。

「 、何で秋丸にパンなんか貰ってんだ? 」

の命の源(となる予定)であるチョコクリームパンが、後ろからニュッと突き出てきた手に奪われた。榛名である。

「 あの、…お昼ご飯を忘れちゃったので 」
「 財布ぐらい持ってんだろ、購買行けよ 」
「 ですから、そのー…財布も、家に…… 」
「 弁当も財布も忘れただぁ!?アホ、誰がに分けるかバーカ。このパン秋丸のだろ?
  自分の不注意で忘れちまったコイツに、分けてやる必要なんざねぇよ。てめぇが食えばいい 」

ポンと、軽く投げて返す。秋丸は、さんが予想していたのと、ほとんど同じコト言ったな…と苦笑した。
現には、「 ほら、やっぱり言ったでしょう!? 」 と小声で秋丸に伝えてきている。うん、やっぱり言ったね。

「 良いんだよ榛名。それ、買ったはいいけど…やっぱ甘ったるそうだし。さんに食べて貰った方が幸せだよ 」
「 あ き ま る く ん … ! 仏様!優しさの欠片も見当たらない榛名君とは、大違いですね! 」
「 何だと!?なぁ、お前は知らねぇだろうがなぁ!?秋丸は、俺よりもずっと怖―― 」

笑みを深くした秋丸を見た瞬間、榛名は喋るのを止めた。どうやら、喋らせては貰えないらしい。

「 榛名の言う事なんか放っといて良いからね。じゃあねちゃん、教室で友達と食べておいで 」
「 チョコクリームパン、美味しく頂きます。秋丸君、有難うございました! 」

彼を仏様だと信じきっているは、嬉しそうに自分の教室へ帰って行った。幸せなヤツめ、と榛名は舌打ちをする。
まぁ彼女に言った所で 「 冗談仰らないで下さいよ。秋丸君に何の恨みがあるんですか 」 と返ってくるだけなのだろうが。
しかし、自分はただ、此処で昼ご飯を食べようと思っていただけなのに…どうして秋丸に、睨まれる羽目になっているのか。

――は、幼少時からずっと一緒だった自分より、たった数年の付き合いしかない秋丸の方を信頼している。
俺…そんなに怖いのか?と考える榛名の顔は、傍から見ると、般若の様に怖ろしかった。


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